画家 浜田隆介

詩集

詩・酔いどれ舟

足音

ヒタヒタ シタシタ と
たしかにこの耳が聴いている

花冷えのおそろしい足音を
とこしえの命を導く真実のおぞましい爛熟を

ヒタヒタ シタシタ と
秘やかに水音を忍ばせて
瀬淵を渡って来る足音は
幽暗の古代と来世の荒廃への萌し

あえて未来への進歩と創造への妄想を
子孫に伝え遺そうとする義務と自負
ただをれだけに每日の営みに汗を流す
神はおごそかに宣う

“みよ! わたしはすべてのものを新しくする”

神の創造物である人間と
人間の創造物である道化の神との同工異曲

心を許して偽しあえる恋しいひとはもう何処かへ行って
しまった

神よ 新しく宣うなら
牛を飼い羊の遊ぶ高原と
土をおこし草を鋤き
麦をまく沃野をお与え下さいませ

ひとかけらの曠罪も覚えず
微塵の色気もない利発者が
地球のスラムに蠢めく魂の収奪をはじめる

叫喚の坩堝の中に指呼奔走する娑かたち
その醜乱の疲れるとき

ヒタヒタ シタシタ と

たしかにこの耳が聴いている

(昭和六一年四月)

第1期
(1983年2月~11月)
第2期
(1985年6月~1986年5月)