ヒトはもともと素晴らしく自由
神さまはそうおっしゃって
いのちと知恵をお授けくださった。
自由はすごくエキサイティングで空しい
何もなく何も持たないでをのまま年をとつて
消えていく
それでも絶対に好きなのだ。
恋もいい
甘ったるく赤い血だけが騷いでけだるくて寂しい
それでもやつぱり好きだ。
海は広いし山は高く空はもっと高い
生きものは愛嬌があっておもしろいし
小鳥たちはか細くていとおしい。
わなかがへったら哀しくこわいけど
満腹しきつたアノミーのほうがより恐しい。
ヒトは叡智に頼りすぎたようだ
ヒトはただ生きていくだけのことだ
図式化しようと為すぎて何処か狂ってしまった。
遊動民の定住革命は地中海沿岸の中石器時代
わが日本では縄文のすこし前か
いずれにしてもそう昔のことでもない。
芸術の情念なんてものは離合集散して
無限じ拡大していくものだ
適正規模のお城を築くなんて滑稽なはなし
いとしいひとよ うたを唄いましょう
ちょっとした音程の乱れは宥しください
罪や悩みを忘れようとして
どうしようもなく押しせまる嫌悪の軋轢を
そのしなやかな脚で蹴とばしてくれませんか
いきいきと輝く感性のきざしの手答えを
いのちと引替えににぎりしめてみたい
悪夢の幻想が役にもたたぬ隠喩のゲロを
吐かせ続けさせようとするのはあなたですか
いとしいひとよ
恋は美しいと想いますか
夢は愉しいと想いますか
革命は素敵だと想いますか
そろそろ夜が明けます。
また呑みすぎてそまったようです。
(昭和六〇年七月)