冬景色
夜を徹しての年始の宴にしたたか酔いしれて
猫の待つわが巣に帰ろうとする足どりが
こころもとない
だいじょうぶでずか・・・・・
雪が降ってきました
風花です
菊三とランが腹を空かして待っていまずから・・・・・
ご馳走になりました
いたわりの眼差しを背中に覚えながら
一歩 半歩と
まえうしろをしてよこへ運ぶ
千鳥足とはよく云ったもんだ
日がまだ高い
この辺りは一面の葡萄畑だった
いつの間にか削られ剝がされて
荒々しい地肌のままの丘陵の真中を
アスファルトの広い道路が西へ向かって延びる
車も人影も見えない
分譲地と書いたブリキ貼りの看板が傾いて
小雪まじりの寒風に震え哭いている
灰色の瘦せ犬が一匹軀をすぼめて横ぎっていった
渴いた粉雪が路から舞いあがって飄と横に辷って散る
夏にあれほど驕り茂ったセイタカアワダチソウが
枯れ縮んだ骨を風に叩かれ狂い踊る
坂をのぼりつめて路の走る方角に二上山が霞んで見える
越えれば河内・堺 人里の息吹き
茅渟(ちぬ・和泉国沿岸の古名)の潮風を遮って連なる生駒金剛葛城信貴の山裾は
万葉のみやこより“忌”にあたる方角の地とか
ヒュー ヒョー
会釈なく頰に刺さり嗚くこの風の音は
天平の栄華をささえ
神を怖れ神に憑かれ
怒ることを忘れた仏ども
千古の歴史の秘めごとに綴じ込められた
生きる営みの恨みつらみの凝塊か
泪とため息のリクイエム
せっかくの
五体の火照りが秒きざみに凍ていく