画家 浜田隆介

詩集

風物詩・酔いどれ舟 2

世相

アルコールで頭のめぐりが弱ったあたりで
週刊誌の耳慣れない言葉に出くわす

いつものことだけど

ディコントラクション(脱構築)

フランスのジャック・デリダというおっさんが、ロゴス
主義の西欧哲学を読み変えようというシロモノ
本質/現象・理性/経験・必然/偶有

世の中を二項対立に捉える形而上学の文化支配装置・
構造主義・ヒエラルキー・アイデンティティ・

酔眼に老眼鏡かけて
マジでいったら厄介千万、端しょって端しょって

脱構築とは何じゃいな
主体だのアイデンティティだとかが立ち現れる一切の
場に於て
抹殺される側に立っての批判をやらかそうという
こころ意気
内なる他者・差異の抑圧を認めない
それを外に出してしまいましょう

気に入りましたねぇ うれしいねぇ
醒めかけた酔いがここちよくもどってきました
        *         *
アメリカのスぺースシャトルが神サンの怒りに触れて
ひとのいのちを道づれに虚無の世界に散っていきましたね

世界中が驕り狂っていたわけでもないし、わたしは覗いていません

神サンはときおり気まぐれにゾッとするようなお仕置を
なさいますわい

神サンにもほれて
脱構築にもほれて
ご機嫌を伺いながら澱を落して醒めて唄いましょう

〽死ぬも生きるもねぇおまえ
川の流れになにかわる・・・・・・
寒い冬の夜は静かでながいですねぇ

湘南に住むわたしの古い友は
バロック音楽を聞きながら紅い抽象画を描いています
わたしはシンセサイザーで、まほろばの里に琵琶を奏でる
天平のをんなを描いています

森羅巧象いのちがけでアホを為る

これが世相というものでしょうかねぇ

(昭和六一年二月)

第1期
(1983年2月~11月)
第2期
(1985年6月~1986年5月)