画家 浜田隆介

詩集

風 化

春分の日(三月二一日)、アメリカの空母、エンタープライズがまた佐世保に人港したという。その船は、大きく魁偉であった。
一五年前にも同じ佐世保に入って来たときは、ベトナム戦争の真最中に抜身を引っ下げての闖入振りに庶民的反撥の騰ぶりにはスサマジキものがあったというが、こんどはジャーナリズムが「反核運動の風化を見る」と報道した。
高度成長の資本の驕りと、政治がらみもあっての庶民感情の騰ぶりが衝突すれば火花も散ろうし、お互いの気負が燃焼ずる。
“気負い”が風解・風化の起点として見ると、風化現象は平和ムードへの起点とも云えるし、平和は諦感への起点ということにも落着いて、めでたし、めでたし。
せんだって、共に青春の気負いを共に持ち、美術にうつつを抜かしていた仲間の生き残りが集まって楼花の下で酒盛りをした。
今を語らず、先を問わず、ひたすら青春時代の風化を嘆いていたが、ひとつ、未だ風解を覚えぬものを発見し、抱腹絶倒、泪を流して喜んだ。
次の七言絶句がそれである。

虎 竜 一 翻 知レ 唐 将
前 唐 一 翻 指レ 天 下
鴬 満レ 荒 野 寒 更 止
矢 張 奔 馬 入レ 天 南

乞われれば、詳訳披露にやぶさかではありません。六五才

(昭和五八年四月一日・四月莫迦)

第1期
(1983年2月~11月)
第2期
(1985年6月~1986年5月)