画家 浜田隆介

詩集

“風 化”続演

風流七言絶句が、一部の読者のヒンシュクを買い、評判よろしからずとは、マジに取組んできた積 もりだけに、戸惑いを感じる。
るんるん誌の第3号を送って、軽く投稿依頼しておいた東京の友人から先日電話があって、るんるんは面白く読ませてもらった、執筆者から金を取るとはなかなかユニークである。実は受取ったときはすでに入院中で連絡が遅くなって失礼したと云う。病名は脳血栓で、幸い軽度なもので、いま自宅でリハビリテーションをしていると云う。
リハビリとは自分の軀体を苛めることだそうだ。「みんな大なり小なり自分で自分をイビって生きていかなくちやならん昨今ではないか」と云うと、「いや、こんどの俺の場合のように半分痺れた部分を引っさげて余生を送らねばならん者と普通体軀の者とは世界が異うものだ」と云う。
年中降水確率五〇%程度では年中傘を持って歩くのが常識というものだろうが、バロック音楽を聞きながら抽象画を描き、酒を楽しみ、「現美展」というマィナーの美術団体の長老づらをしてニタリニタリしていた男なのだが・・・・・・。
電話では口のもつれも感じられず、声も以前と同じだし、絵も充分描けるというので何よりだったとつくづく思う。
「リュウさんも酒ばっかり呑んでいないで、健康に気を付けないとダメだぞ」というから、「お前さんはキッパリ断酒したのか」と聞くと、「む、まあな、ま、医者が云うからいち応そうなっとるんだがなあ・・・・・・」と歯切れが悪い。どうせ監視の目をくぐって呑んでいるだろう何ともイジマしい感情に人情味が溢れている。
管理されることを自ら希む市民型生活者にとって、生と死の繰り返しを享楽する自然のメカニズムを何かのかたちで否定しようと為したくなるのも人情だろうか。
風流七言絶句は今回限り、次号からは愴絶に「糠味綴り方」を書こう。

参 禅 世 魁 偉 能 納
嫁 裸 子 汚 己 漏 恣
塗 師 塗 鴉 詐 寝 嫁
仕 手 得 魅 衣 体 位

高杉 晋作

(昭和五八年六月一九日、父の日・六五才)

第1期
(1983年2月~11月)
第2期
(1985年6月~1986年5月)